うめぼしと鰻 連載第2回
前回に引き続き、中学時代の話。
中学生になった僕は、バスケ部に入部した。
バスケやサッカーというと運動部の割にチャラチャラしているイメージを持っている人も多いと思う。
チャラチャラしていたかどうかはさておき、髪型は自由だった。
みんなそれぞれ個性豊かで、オシャレな人はワックスなどつけてかっこよく仕上げていた。
そんな中、僕の髪型はいわゆる『カリメロヘアー』だった。
世代によってはカリメロが伝わらないかもしれないので補足すると、ヘルメットみたいなイメージ。
オシャレをする気も一切無く、モテようという気も皆無だったせいか、髪もなんとなく切らずにいた。
そんな保守的な僕にも転機が訪れた。
それは中学2年時の林間学校で起きたちょっとした事件。
登山やキャンプフィヤーなど盛りだくさんの林間学校では、バンガローに宿泊した。
中2といえば多感MAXな時期で、異性への意識が少なからず芽生えてくるものだ。
「俺たちのバンガローに女子を呼ぼうぜ」と誰かが言いだした。
内心ガッツポーズである。自分は言いだす勇気も、連れてくる行動力もないのだから。
ちなみにこの「女子」という呼び方も中学生ならではである。
そして3、4人の女の子を連れてきてUNO大会が幕を開いた。
さっきまでの男だらけでしゃべってた時とは打って変わって、テンション上がりまくるバカ男子ども。
お調子者の僕はテンションを上げて騒ぐことで、女子が近くにいる緊張感を紛らわせていた。
しかし、ただゲームをするだけでは飽き足らず、当然バツゲームが発生するのがお約束である。
合コンの王様ゲームみたいな過激なものではなく、「好きな人をバラす」というとてもかわいいバツゲームだ。
最初はみんな、「好きな人なんかいねーよ」とかごまかすけれど、顔はそうは言っていない。
どう見ても「(みんな、俺の好きな人を聞いてくれ)」っていう顔なのだ。
そんなこんなで盛り上がりを見せたUNO大会が終盤に差し掛かった時、ついに僕が負けてしまった。
ご多分にもれず、僕も当時好きな女の子がいたので半ば強制的に自白させられた。
※決して自分から聞いてほしいオーラは出していないことを断っておく。
すると、「コクってこいよ。」とガキ大将のSくん。(Sくんが分からない人は第1回を参照)
しまった。僕の中学校において、彼の命令は絶対なのだ。
しかし、こればっかりはさすがにできない。
そこで、ふと考えてみた。これは「好きな人」を自白した時点でバツゲームは完了しているのではないか。
何で僕だけ、第二段階のバツゲームに突入してるんだ?
ちらっとSくんの方を見ると、彼の目がマジだ。うわー。マジか。
結局、「コクれ」「無理だよ」の押し問答が続き、場も冷めつつあったのでさすがにSくんも諦めてくれた。
彼一人だけビックリするぐらい不機嫌だったが。
これが中2の夏の林間学校での出来事である。
今度は時間を少し早送りして、中3の春に話を移したい。
ちょうど、バスケ部も最後の引退試合に向けて追い込みに入った時期だった。
ある時、ふとSくんがこんなことを言いだした。
S:「お前、そういやあの時のバツゲームでコクってなかったよな。」
僕:「そ、そんなこともあったかな…」
S:「コクらなかったら坊主にするんだよな?」
僕:「…!?(そんな約束したっけ?全く覚えていないぞ。)」
このままだと、坊主にするまで圧迫され続ける予感がしたので、翌日床屋に直行。
フタをあけてみると、5厘刈りの坊主頭の自分がいた。
よくよく考えてみると、これは理不尽なことではないかという思いが頭をよぎった。
でも既に刈ってしまったし、考えても仕方ないや。
と、変にポジティブに脳みそも髪も切り替えてしまうことにしたのである。
この一連の思い出を先日、Sくんと語る機会があった。
誤解を招くといけないので言っておくと、彼と僕は親友である。これ、本当に。
で、坊主になった話をしていて彼がこう言った。
S:「そういや、あそこで坊主にして以来、短い髪型にシフトしたよな。短い方が似合うよ。」
何故だか、妙に納得してしまった自分がいたのである。
よく分からない流れで巻き込まれたバツゲームが約7年の時を経て、このSくんの一言でここに終結した気がした。
終結というか完成というか、まるで一つの時代が終わったかのような、なんとも言えない清々しい気持ちになったのが本当に不思議である。
では、おやすみなさい。まだ寝ないけどね。